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【三宅教室】単発プレスと順送プレスの違いとは?現場が使い分ける6つの判断基準

2026-08-27

【三宅教室】単発プレスと順送プレスの違いとは?現場が使い分ける6つの判断基準

「単発プレスと順送プレス、うちの部品はどちらで作るべきなのか」

お客様との打ち合わせで、最も多くいただくご質問のひとつです。どちらが優れているという話ではなく、製品形状・数量・要求品質・納期のバランスで最適解が変わる——これがプレス加工の難しさであり、面白さでもあります。

本連載 「三宅教室」 は、当社で技術部門を統括する工場長の三宅が、日ごろ若手社員に現場で教えている内容を、そのまま社外の皆さまにもお届けする技術コラムです。社内研修で実際に使っている資料をベースに、専門用語をかみ砕きながら解説していきます。

第1回のテーマは、プレス加工の入口にして最重要の分岐点、「単発プレスと順送プレスの使い分け」 です。

単発プレスと順送プレスとは?——まずは基本から

単発プレス(たんぱつプレス) は、1台のプレス機で1工程ずつ加工を進める方式です。材料は板状の シート材 を使い、抜き・曲げ・絞りといった工程ごとに金型を交換するか、複数台のプレス機を並べて順に流していきます。

順送プレス(じゅんそうプレス/プログレッシブプレス) は、帯状の コイル材 を自動で送りながら、1台のプレス機の中で複数工程を連続して行う方式です。材料が金型内を進むにつれて、抜き・曲げ・成形が段階的に施され、最終工程で製品が切り離されます。

三宅工場長: 「新人にはいつもこう言うんです。単発は『職人が一手ずつ指す将棋』、順送は『一度組んだら止まらないベルトコンベア』だと。どちらが強いかじゃない。局面が違うんです。」

若手Aさん: 「じゃあ、量が多ければ順送、少なければ単発ということですか?」

三宅工場長: 「半分正解です。でも数量だけで決めると必ず失敗します。判断軸は6つある。順番に見ていきましょう。」

【比較表】6つの視点で見る単発プレスと順送プレス

比較項目   

単発プレス

順送プレス

要員

多い(非ロボットラインの場合)。
材料投入からプレス作業、梱包まで人手が必要

少ない。
材料投入と梱包のみで1〜2名程度(製品サイズによる)

段取り性

セッティング時間が長い。金型の面数分だけ長くなる

セッティング時間が短い

材料面

シート材

コイル材

生産性

高い。条件次第でロボットより速く生産可。
ただし製品形状・マシンレイアウト・要員の技量に出来高が左右される

高い。安定した出来高を維持しやすい

品質面

ヒューマンエラーによる品質リスクあり

ヒューマンエラーによる品質リスクなし

安全面

プレス要員が手を金型に入れる必要あり

セッティング・修理時を除き、手を金型に入れる必要なし

以下、それぞれの項目を現場目線で掘り下げます。

判断基準①:要員体制——「人がどこに立つか」で原価が変わる

単発プレスは、材料の投入からプレス作業、そして梱包まで、工程ごとに人が介在します。非ロボットラインの場合、必要な要員数は順送プレスより明らかに多くなります。

一方の順送プレスは、コイル材をセットしてしまえば、材料投入と完成品の梱包だけ。製品サイズにもよりますが、1〜3名程度で運用できます。

三宅工場長: 「人件費だけの話じゃないんです。要員が多いということは、教育しなければならない人数も、シフトを組む手間も増えるということ。逆に順送は、少人数で回せる代わりに、その1〜3名が異常に気づけるかどうかに品質が懸かる。人の使い方の設計思想が違うんですよ。」

なお当社では、単発プレスのラインについてもロボット導入による省人化を進めており、方式による要員差の縮小に取り組んでいます。

判断基準②:段取り性——金型の「面数」がそのまま時間になる

単発プレスは、セッティング時間が長くなります。理由は明快で、金型の面数分だけ段取りが発生するからです。5工程あれば5回の段取りが必要になる、という単純な話です。

順送プレスは、金型を1型セットすれば全工程が完結するため、セッティング時間は短く済みます。

三宅工場長: 「ここを見落とす人が多い。ロット数が小さいと、加工時間より段取り時間のほうが長くなることがあるんです。『生産数が少ないから単発で』と決めた結果、段取りばかりしていた——なんてことにならないよう、必ず段取り時間を含めた総時間で比べてください。」

判断基準③:材料形態——シート材とコイル材、扱いやすさの違い

順送プレスはコイル材が前提です。対して単発プレスはシート材を使用します。

シート材のメリットは、コイル材に比べてサイズが小さく、重量も軽いこと。保管スペース、社内搬送、段替えのしやすさといった面で有利に働きます。

判断基準④:生産性——「速いのはどっち」の答えは条件次第

意外に思われるかもしれませんが、単発プレスの生産性も決して低くはありません。条件が整えば、ロボットラインよりも人の手のほうが速いケースは実際に存在します。

ただし単発プレスの出来高は、製品形状・マシンレイアウト・要員の技量という3つの変数に左右されます。日によって、担当者によって、数字が動くということです。

順送プレスは、一度立ち上がれば安定した生産性を維持できます。

三宅工場長: 「単発の生産性は『上振れもするが下振れもする』。順送は『きれいな直線を引く』。納期の読みやすさで言えば、順送に軍配が上がります。」

判断基準⑤:品質面——ヒューマンエラーが入り込む余地

単発プレスでは、人が工程間で製品を持ち運び、金型にセットします。そこには構造的に、ヒューマンエラーのリスクが存在します。

順送プレスは、この点で明確に優れています。材料が金型内を自動で進むため、

  • 工程飛ばし(必要な工程を飛ばしてしまう)
  • シート材や製品を二枚重ねてのプレス
  • 製品の向き・裏表の間違い

といったミスが、そもそも発生しません。

また、金型の 保証ショット数 についても、順送金型のほうが単発金型と比べて多く設定できる傾向にあります。長期・大量生産の案件では、この差が金型償却の計算に効いてきます。

判断基準⑥:安全面——手を金型に入れるか、入れないか

単発プレスでは、プレス要員が常にプレス機の目の前に立ち金型に手を入れる作業が発生します。順送プレスでは、セッティング時と修理時を除き、金型に手を入れたりプレス機に近づく必要がありません。

安全対策として、当社では100台以上ある全てのプレス機へのセーフティーセンサーの導入を徹底し、プレス作業における安全確保に取り組んでいます。

三宅工場長: 「若い人には必ず言います。品質はやり直せる。納期は謝れる。でも、安全だけは取り返しがつかない。だから安全は『対策項目』じゃなくて『前提条件』なんです。」

順送プレスの落とし穴——寸法調整に制限がある

ここからが、三宅教室の本題です。教科書には書かれていない、現場でしか分からない話をします。

順送プレスには、製品の寸法調整に制限があるという重要な制約があります。

仮に量産中に順送金型で寸法を微調整しようとして ダイハイト(金型の高さ)を動かすと、全工程の寸法が同時に、細かく変化します。つまり、一つの工程だけに絞った寸法調整ができないのです。

具体例: 曲げ高さを調整しようとしてダイハイトを下げる → 同時に、別工程で行っている刻印の深さまで深くなってしまう。

三宅工場長: 「プレス機に載せている量産中に『ここを0.01mmだけ』という話が出ると、順送は本当に苦しい。場合によっては生産計画を中断しプレス機から金型を降ろして修正が必要になります。だから順送を選ぶなら、金型設計の段階でどこまで作り込めるかが勝負なんです。逆に単発は、工程ごとに独立しているから現場でササっと調整できる場合もある。この自由度は、試作段階や仕様変更が読めない案件では大きな武器になります。」

若手Aさん: 「……単発が残っている理由が、やっと分かりました。」

単発プレスにしかできないこと

単発プレスの強みを、あらためて整理します。

1. 複雑な形状に対応できる 曲げ高さがあるなど、複雑な形状の製品にも対応可能です。

2. バリ方向のコントロールができる 工程ごとに製品の向き及び裏表を変えられるため、バリ方向を逆にするといった要求にも応えられます。

3. 生産管理面で融通が利く 単発用に設計した製品は順送プレス機にも載せられるため、生産計画の組み替えに柔軟に対応できます。設備が埋まっているときに逃がし先を作れる、というのは現場にとって大きな安心材料です。

まとめ:どちらを選ぶべきか

三宅工場長: 「結局のところ、方式を決めるのは図面と数量だけじゃない。『この製品が数年後どうなっているかや生産性、安全性、そしてお客様のコストメリット』まで想像して選ぶ。それがプレス屋の仕事です。」

当社では、単発プレス・順送プレスの両方式に対応し、お客様の製品仕様と生産計画に応じた最適な工法をご提案しています。図面の段階からご相談いただければ、量産後に効いてくる制約まで含めて検討いたします。

よくあるご質問

Q. 単発プレスと順送プレスの一番大きな違いは何ですか? A. 材料形態と工程の進め方です。単発プレスはシート材を使い1工程ずつ加工します。順送プレスはコイル材を自動送りしながら1台の金型内で複数工程を連続処理します。

Q. 順送プレスのデメリットはありますか? A. 量産中にプレス機に載せた状態での寸法調整の自由度が低い点です。ダイハイトを調整すると全工程の寸法が同時に変化するため、特定の工程だけを狙った微調整ができません。

Q. 小ロットの場合、どちらが適していますか? A. 一般的には単発プレスが適していますが、段取り時間を含めた総時間での比較が必要です。金型の面数が多い場合、段取り時間が加工時間を上回ることもあります。

Q. 単発プレスは生産性が低いのですか? A. いいえ。条件が整えばロボットラインより速いケースもあります。ただし製品形状・マシンレイアウト・要員の技量によって出来高が変動します。

会社情報

PRESS CRAFT (THAILAND) CO., LTD.

産業分類

OA機器 / 家電 / AV機器

主要三品目

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当社は大阪府八尾市に本社を構える株式会社創美工芸のタイ国における第二工場です。 コラートとも呼ばれるナコンラチャシマ県の壮大な土地に100台以上のプレス機、 粉体と溶剤塗装が加工な塗装設備、タイ国内の板金プレスメーカーでもトップレベルとも言えるTIG/FIBER/レーザー溶接等の豊富な溶接設備を取り揃えています。 工場設立から30年を目前に新規設備としてタレットパンチ・レーザー複合機を 導入してお ...

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